AnimeGen-I2Vで動画の品質を左右するのは、長く華やかな文章ではなく、「誰が」「何を」「どの速さで」「カメラをどうするか」を矛盾なく指定したプロンプトです。元画像が構図と人物を決めるため、テキストでは変化させたい動きへ焦点を当てます。複数の大きな動作を一度に要求すると、顔、手、衣装、背景の一貫性が崩れやすくなります。
AIdeaLabの公式モデルカードでは英語プロンプトが推奨され、例として短い動作指示へJapanese anime styleを付加しています。本稿ではこの仕様を基に、プロンプトの構造、ネガティブプロンプト、場面別の例、改善手順、記録方法を解説します。情報は2026年9月6日時点です。
AnimeGen-I2Vのプロンプトで決めるもの
Image-to-Videoでは、開始画像が人物、衣装、背景、色の多くを既に示しています。プロンプトで元画像の全要素を再説明すると、記述と画像の小さな不一致が新しい人物や物体の生成につながる場合があります。文章は動きと演出の制御に使います。
基本要素は、主体、動作、速度・強さ、表情・視線、カメラ、環境変化、スタイルです。すべてを毎回入れる必要はありません。変えてはいけない要素は「camera remains fixed」「background remains unchanged」のように短く指定します。
プロンプトは一回で完成させず、基準となる短い指示から始めます。一項目ずつ加え、どの言葉が出力へ影響したかを記録します。設定とシードを固定して比較すると、文章の差を判断しやすくなります。
推奨される基本テンプレート
実務では次の順序で整理できます。
- 主体:the character、the woman、the robotなど
- 主要動作:turns her head、slowly raises his handなど
- 表情・視線:smiles gently、looks toward the windowなど
- 速度・順序:slowly、subtly、then、at the endなど
- カメラ:static camera、slow dolly in、gentle panなど
- 環境:hair moves in a light breeze、soft light changesなど
- スタイル:Japanese anime style
例えば、「Japanese anime style. The character slowly turns her head to the right, blinks once, and smiles gently. Her hair moves slightly in a soft breeze. The camera remains fixed.」のように構成します。一つの主要動作と小さな補助動作に抑えています。
長文にするほど正確になるとは限りません。人物が走り、振り返り、手を振り、背景で車が動き、カメラが一周する、と同時に要求すると、モデルが優先順位を決められません。カットを分ける方が編集可能な結果を得やすくなります。
英語プロンプトを推奨する理由
公式モデルカードは、推奨言語を英語としています。日本語が必ず失敗するという意味ではありませんが、学習・評価で英語指示が中心である可能性があり、公式例も英語です。再現性を重視するなら、英語を基準にします。
日本語で演出を考え、機械翻訳やLLMで英語へ変換する場合は、翻訳後をそのまま使わないでください。「右」と「左」、「ゆっくり」と「急に」、「目を閉じない」と「目を閉じる」のような重要条件を確認します。主語が省略された日本語は、英語化の際に別の対象へ動作が付くことがあります。
専門的な映像用語を増やすより、画面で確認できる動作へ言い換えます。「感動的に」だけでは曖昧です。「eyes gradually soften, a small smile appears, shoulders relax」のように、表情と身体の変化を指定します。
動きの大きさを制御する言葉
小さな動きには、subtle、slight、gentle、slowly、barelyなどを使います。まばたき、呼吸、髪の揺れ、視線移動は小さく指定するほど元画像を保ちやすくなります。静止画に生命感を加える用途では、大きなカメラ移動を避けます。
大きな動きには、quickly、energetically、wide motionなどがありますが、破綻リスクが上がります。強い動作が必要なら、開始画像を動作直前の姿勢にし、生成区間を短くします。モデルへゼロから全運動を推測させず、入力画像側で準備します。
順序はthen、after、at the endを使って示せます。ただし、五秒程度の短い例へ三段階以上の動作を詰め込むと、どれかが省略される場合があります。「視線を移す」「最後にまばたきする」程度に抑えます。
カメラ指示の使い分け
人物の同一性を優先する場合は、static cameraまたはlocked cameraと指定します。人物動作とカメラ移動を同時に行うと、モデルが画角変化と身体変形を混同しやすくなります。最初の検証は固定カメラで行います。
接近にはslow dolly in、引きにはslow dolly out、横移動にはgentle panを使えます。zoomとdollyは映像効果が異なりますが、生成モデルが厳密に区別しない場合があります。要求する画面変化を見て評価してください。
大きな回転や人物の周囲を一周する指示は、元画像から見えない背面を生成する必要があります。設定画や別角度の資料がなくてもモデルは作りますが、衣装や髪型が一致する保証はありません。複数角度が重要なら、別工程や専用制御を検討します。
ネガティブプロンプト
公式例のネガティブプロンプトには、3d, cg, photo, stop, waitが使われています。AnimeGen-I2Vが目指す日本アニメ調から外れた写実・3DCG表現や、動かない出力を避ける意図と読めます。ただし、公式例の語を増やせば必ず改善するわけではありません。
ネガティブプロンプトには、実際に繰り返し発生する不要傾向だけを追加します。例えば、flicker、extra fingers、deformed hands、text、watermarkなどです。一方、モデルがその語をどう解釈するかは一定でなく、禁止語を大量に並べると主要動作が弱まる場合があります。
否定したい対象を通常プロンプトと矛盾させないでください。通常側で「camera zooms in」、否定側で「camera movement」と書けば、出力が不安定になります。主要条件を一つの場所で管理します。
場面別プロンプト例
まばたきと呼吸
Japanese anime style. The character breathes calmly and blinks once. Only the hair tips move slightly. Static camera, unchanged background.
元画像を維持しやすい小さな動きです。呼吸で肩や胸が大きく変形する場合は、breathes subtlyへ弱めます。
振り向く
Japanese anime style. The character slowly turns her head toward the window on the right. Her eyes move first, then her head follows. Static camera.
右方向が画面基準か人物基準か曖昧なら、「toward the window on the right」のように画面内の対象を指定します。大きく振り向くと顔が変わる場合は、角度を小さくします。
髪と衣服を風で揺らす
Japanese anime style. A light breeze gently moves the character's hair and the edge of the coat. The body and camera remain still.
風をstrongにすると背景や全身まで揺れる可能性があります。対象部位を限定します。
カメラを近づける
Japanese anime style. Slow cinematic dolly in toward the character's face. The character remains still and keeps the same expression.
人物動作を止め、カメラだけを変化させます。顔の細部が再生成されるため、目や髪の一貫性を確認します。
終了画像へつなぐ
Japanese anime style. The character slowly brings both hands together in front of the chest and closes the eyes at the end. Smooth natural motion, fixed camera.
フレーム補間では、開始・終了画像の差を説明する動作へ絞ります。二枚にない新しい物体を追加しません。
プロンプト改善の手順
第一に、主要動作だけの短い基準プロンプトを作ります。第二に、同じシード、画像、解像度、フレーム数で出力します。第三に、顔、手、背景、動作達成度を採点します。第四に、一つの語句だけ変えて再生成します。
改善例として、振り向きが速すぎる場合はslowlyを加えます。背景が動く場合はstatic cameraとunchanged backgroundを加えます。人物が止まる場合はネガティブ側のstop、waitを確認します。手が崩れる場合は、文章で細かく矯正するより、動作を小さくする、開始画像を変える方が効果的な場合があります。
採用しなかったプロンプトも削除せず、失敗理由とともに残します。担当者が替わっても同じ失敗を繰り返さないよう、業務ごとのプロンプト集と評価画像を一緒に管理します。
プロンプトだけで解決しない問題
公式モデルカードは、複雑な人物動作、手・指・目・装飾の一貫性、人物同一性、ちらつき、長い詳細動作、複雑な物理相互作用を既知の限界として挙げています。これらは文章を長くするだけでは解決しません。
元画像を高品質にする、動きを短く分ける、背景を別レイヤーにする、複数候補から選ぶ、編集ソフトで補正する工程が必要です。プロンプトは制御手段の一つであり、入力素材と後処理を含む制作設計が品質を決めます。
また、既存作品名や特定作家名を入れて権利問題を回避できるわけではありません。公開・商用利用では、入力画像の権利と出力の類似性を確認します。固有のブランド制作では、自社で承認したスタイル記述、色、線、カメラ語彙を用意する方が再現性を高められます。
チームで使う記録項目
プロンプト本文だけでなく、ネガティブプロンプト、シード、モデルのリビジョン、LoRA、解像度、秒数、fps、推論ステップ、入力画像を記録します。同じ文章でも環境が違えば出力は変わります。
採用判定には、人物同一性、動作達成度、ちらつき、手・顔の破綻、背景安定、修正時間を使います。「良い」「悪い」だけでなく五段階など同じ尺度で残します。最終的には、生成回数ではなく採用可能な動画の割合を改善します。
まとめ
AnimeGen-I2Vのプロンプトは、元画像を説明し直す文章ではなく、画面内で起こす変化を制御する指示です。主体、主要動作、速度、表情、カメラ、環境を整理し、一つの主要動作から始めます。公式が推奨する英語を基準とし、翻訳時の左右・否定・順序を確認します。
同じシードと設定で一項目ずつ比較し、プロンプトで直らない破綻は画像準備、カット分割、後処理で解決します。導入手順と必要環境は、AnimeGen I2Vの使い方をご参照ください。
よくある質問
日本語のまま入力できますか
動作する可能性はありますが、公式は英語プロンプトを推奨しています。再現性を重視する場合は短い英語へ整理します。
プロンプトは長いほど良いですか
長いほど良いとは限りません。矛盾や同時動作が増えるため、主要動作と必要な固定条件へ絞ります。
ネガティブプロンプトは何を入れますか
公式例では3d、cg、photo、stop、waitが使われています。自分の出力で繰り返す不要傾向だけを追加してください。
同じプロンプトで同じ動画になりますか
シード、モデル、依存関係、入力画像、設定まで揃える必要があります。それでも実行環境による差が出る可能性があります。
